医療現場ではヘルスリテラシーの重要性はすでに認識されていますが、患者やその家族はヘルスリテラシーという言葉でさえ認識していないことが多いようです。ヘルスリテラシーは、様々な健康情報を手に入れつつ、正しく情報を理解したうえで、自分にとって必要な情報を活用する知識や能力を意味します。体に何かの症状が現れる場合、その症状の原因を理解しているかどうかは、健康維持とともに、健康寿命を延ばすのに役立ちます。そのため、患者側のヘルスリテラシーは、寿命が延びてきた日本の社会で重要になるといえるでしょう。最近では健康にかかわる様々な情報がインターネットを通じて広く普及しています。情報格差がなくなることは良いことですが、情報が独り歩きしたり、患者が自分にとって重要な情報を見極められない事態も起きています。その点で大切になるのが、自ら正しい情報を見極めて、上手に活用できる技術であるヘルスリテラシーです。患者のヘルスリテラシーが重視されるようになると、新たな問題も出てくることが懸念されています。その一つが、患者のヘルスリテラシーが、医療機関の治療方針と衝突するケースです。このような場合、特に患者からの不満や質問を受けることが多くなるのが、看護師かもしれません。医療は患者と医療機関との共同作業で初めて良い効果を発揮するものです。ヘルスリテラシーが高い患者と良いコミュニケーションを保ち、十分なインフォームドコンセントを行う必要があります。